「原野商法」とは、価値のない土地を将来的に高騰するとの偽りの説明で販売し、購入者を騙す詐欺行為です。特にバブル期に多発し、多くの人が被害に遭いました。不動産業者が「将来、道路が通る」「リゾート地になる」「空港ができる」などといった説明で、山奥や農地に価値のない土地を高額で売りつけるのです。土地の価値がわかりにくい場所をターゲットにしているため、素人の購入者(高齢者)が多く騙されました。原野商法によって、価値のない土地を買ってしまった人々の救済は、難しいことが多いです。これは主に、詐欺自体が30~40年前に行われており、当時の契約や証拠の不備、土地の価値がない場所であるという点が影響しています。
被害者の声
1. 無念の思い
「まさか自分が騙されるなんて、思ってもみなかった…。」
80代の田中さんは、知人の紹介で土地を購入した。将来高騰するという話を信じ、貯金を切り崩して現金を用意した。土地の契約時に、業者は「後で書類を送るから」と言って領収書を渡さなかったが、田中さんはそれを疑わなかった。
「年を取っても、自分の判断に自信があった。それが、こんな形で裏切られるとは…。」
後から土地の価値がほとんどないと知ったときの衝撃は大きかったが、最も悔しいのは、領収書すら手元にないこと。証拠を持っていないという事実が、田中さんの心を重く締めつけている。
2. 信頼していたのに
「ずっと真面目に生きてきたのに、こんな目に遭うなんて。」
70代の佐藤さんは、友人の紹介で知り合った不動産業者を信じてしまった。業者は親しげに振る舞い、まるで旧友のように接してきた。彼が話す土地の将来性や価値の上昇に期待を抱き、心を許してしまった。
「契約の時も、『後で全部送るから、今は気にしないで』と業者に言われ、その場で現金を渡した。領収書なんて、その時は頭に浮かばなかった。」
しかし、後になって送られてきた書類は不完全で、土地の価値はほとんどなかった。佐藤さんの心には裏切られた悲しみが深く残っている。
3. 家族への申し訳なさ
「子どもたちに何も言えない。こんな失敗、恥ずかしくて話せない…。」
60代の山田さんは、子どもたちに心配をかけたくない一心で、土地購入を家族に相談せずに決めた。年金と少ない貯金から大金を引き出し、支払った後で気づいた時には後の祭りだった。何度も業者に電話をかけたが、返事は来ない。
「お金を渡しただけで、証拠が何も残ってない。どうして領収書を受け取らなかったのか、自分が情けない。」
土地が無価値だと知った後も、家族にはまだ何も言えないでいる。無駄にしてしまったお金と、それ以上に、家族に知られたくないという強い羞恥心が、山田さんを苦しめている。
- Aさん(60代・男性)
Aさんはバブル期に将来の値上がりを期待して地方の山林を購入。しかし、実際にはその土地は住宅地として開発される見込みはなく、売却しようとしても買い手が見つからないまま、固定資産税だけがかかり続けている状態。 - Bさん(50代・女性)
Bさんは「将来のリゾート地になる」という業者の説明に心を動かされ、数百万円で山間部の土地を購入。後になってリゾート計画が存在しないことを知り、大きなショックを受けた。返金を求めまたが、契約書にサインしたために法的には難しいとされ、対応に苦労している。 - Cさん(84才・男性 相続人が相談)
Cさんは80年代に、知人に、他には出回ってない話で、空港が出来るから今この土地を買うべきだと、1.5ヘクタールの山間部の田んぼと雑種地を、6000万で買わないかと持ち掛けられた。Cさんは、今後の具体的な開発の話をされたので、買いたい心に火が付き、現金一括5000万円でなら買うと、家族に内緒で購入してしまった。お得に買えたと喜んでいたCさん。しかし半月もたたないうちに、開発は嘘で、空港など出来る予定などない事が分り、その知人に連絡したが、音信不通になってしまった。田んぼや雑種地は、売るにも売れず、Cさんが亡くなるまで、固定資産税を払うだけの負債物件となった。
多くの高齢者にとって、老後の生活資金は限られたもの。自分の蓄えを失うことは、人生の基盤が崩れるほどの痛手となっています。領収書がないということは、無力感をもたらし、何をしても証明できないという現実が、深く本人を苦しめ、言葉にならない悔しさを抱えながら、価値のない不動産を持ち続けている。
1. 早期に問題を共有し、共感を示す
高齢者は恥ずかしさや自己嫌悪から家族に打ち明けることをためらいます。家族が被害者に寄り添い、責めるのではなく「一緒に解決しよう」と共感を持って話を聞き、責任を分担することで、問題解決の一歩を踏み出します。
2. 証拠集めをサポートする
次に重要なのは、契約書や取引の証拠を集めること。領収書がない場合でも、詐欺業者とのやりとりに関するメモ、メール、電話記録など、あらゆる情報を集めることで後の対応がスムーズになる。
- 業者との連絡履歴を確認する
- 土地の所在地や登記情報を整理する
- 銀行取引記録や振込明細を確認する
- 支払金額や契約に関わる書類を探す
- これまでのやりとりの内容を証明できるもの
被害者の相続人からの相談
被害者である父が亡くなった。買わされた土地を相続したので、売って欲しいと相談があった。多くの原野被害の土地をお預かりし、広告を出し、近隣の会社の社宅や工場などに、営業しましたが、購入者が見つからなったので、難しいとお断りしました。しかし、固定資産税を支払い続けていくのは、もう終わりにしたい、早く売ってしまいたいと訴えられましたので、今、出来る事と知りうる情報をお伝えし解決へのお手伝いをさせて貰うことにしました。最初に、相続した土地の現状を正確に把握しましょう。30年以上前の情報では、土地の状態や法的な状況が大きく変わっている可能性があるため、最新の情報を入手する必要があります。
確認すべきポイント
- 登記情報の確認: 法務局で登記簿謄本を取得し、土地の所有権や抵当権などが正確に記録されているか確認します。
- 土地の利用規制: 市町村の役所で、土地がどのような用途地域に指定されているか、開発計画や建築制限などがないかを調べます。
- 固定資産税評価額の確認: 固定資産税通知書を確認し、土地の評価額がどれくらいになっているかを把握します。これが市場価値の一つの目安になります。
原野商法で購入した土地は、一般的には価値が低いか、価値がない場合もあります。しかし、実際にはその土地が再評価されて、一定の価値があることもあり得ます。お金はかかりますが、鑑定士への依頼を、是非検討して下さい。不動産鑑定士に、土地の市場価値を査定してもらうことで、売却する際の参考価格を明確にできます。また、鑑定士のレポートは、購入希望者への信頼性を高める要素にもなります。信頼できる鑑定士を探しましょう。
土地を売却することが難しい場合、その土地を活用する方法を考えるのも一つの選択肢です。土地の価値が低いままであっても、何らかの形で土地を活かすことで、少しでも有益に利用することが可能です。
活用例 農地や太陽光発電用地としての活用: 観光農業(アグリツーリズム)など
- 体験型農業
農業体験や収穫体験を提供し、観光客を呼び込むことで収益を上げます。都市部の人々に「農業体験」「農村ステイ」を提供するアグリツーリズムが注目されています。 - 農家レストランやカフェ
自家栽培の野菜や果物を使ったレストランやカフェを農地に併設し、地元の食材を活かした料理を提供することで収益を上げることもできます。 - ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)
農地に太陽光発電設備を設置し、同時に農作物を栽培する「ソーラーシェアリング」は、再生可能エネルギーと農業を両立させる収益化の方法です。 - 貸農園(市民農園)
農地の一部を市民に貸し出し、家庭菜園や趣味の農業を楽しむスペースとして提供します。固定収入が見込めますし、農業を楽しんだ市民は、自家製品を地元の直売所や道の駅で販売し、地元の特産品としてアピールすることで収益を上げることができます。地域の活性化につながります。 - 農地の賃貸
農業をしたいが土地がない人や、企業に農地を貸し出し、賃料を得る方法もあります。これにより、土地を使わずに収益を得ることが可能です。 - 企業との共同利用
地元企業と提携し、農業用地を共同利用して食品加工や生産に利用することで、安定した収益源を作ることができます。 - 農業に関する補助金や助成金を活用
地域や国からの補助金や助成金を受けることで、初期投資を軽減し、事業の拡大や新しいビジネスモデルの導入がしやすくなります。方法を組み合わせ、地域や市場のニーズに合った戦略を展開することで、農地利用の収益を最大化できます。 - 貸地として提供する: 一定の条件下で、土地を貸し出すことで地代を得ることもできます。需要は地域によって異なりますが、特定の業種や個人が借りたいと考えることもあります。
- 寄付する: 売却や活用が難しい場合、自治体やNPOに土地を寄付するという選択肢もあります。これにより、固定資産税の負担を軽減できる場合もあります。
不動産会社へ相談
不動産会社に売買の依頼をすると、媒介契約を結ばないと売ってはもらえませんので 不動産会社の媒介契約の内容を記入しておきます。ご自身の状況に合わせて、契約しましょう。基本媒介契約時に、お金はかかりません。買主が見つかって売買契約に至った際、費用、手数料を支払います。
媒介契約は3パターンあります。専属専任媒介と専属媒介、一般媒介です。
専属専任媒介契約は、不動産の売却を1社とだけ契約を結ぶ媒介契約です。期間は3カ月になります。ポイントは、他の不動産会社に依頼することはできず、依頼した不動産会社だけが仲介を行います。売主(被害者の相続人)自身が直接買主を見つけることは可能ですが、その場合でも不動産会社を通じて取引を行う必要があります。不動産会社は契約から5営業日以内に物件情報を「レインズ(指定流通機構)」に登録しなければなりません。これにより広く市場に情報が公開されます。そして、1週間に1回以上の活動報告を行う義務があります。
専属専任媒介契約は、専任媒介や一般媒介に比べて、不動産会社がより積極的に売却活動を行える契約です。3カ月間は、とにかく重点的に売ってもらいたい時はこの契約をお勧めします。
次に専任媒介契約の説明をします。期間は3カ月になります。不動産の売却を、専属専任媒介と同じく1社とだけ契約を結ぶ媒介契約です。専属専任媒介と違う点は、売主(被害者の相続人)が直接買主を見つけた場合、弊社を通さずに取引することができる点です。レインズへの登録は契約から7営業日以内にし、進歩報告は2週間に1回以上行う義務があります。直接買主を見つけられそうな場合は、専任媒介にしてください。
最後に一般媒介契約の説明をします。期間制限はありません。一般媒介は、複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約です。どの会社と契約しても問題ありません。また、売主(被害者の相続人)が直接買主を見つけて取引することも自由です。但し、不動産会社は物件を「レインズ(指定流通機構)」に登録する義務はないので、広く市場に情報が公開されないこともあります。そして活動報告を行う義務もありません。一般媒介は、不動産会社に縛られることなく、自分のペースで売却活動を進めたい場合に適しています。
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