リースバック契約は、急に現金が必要な人が、自宅を売却しながらも、売却後もその物件に住み続けることができるしくみで、一時的な資金調達手段として有効ですが、契約が不透明で、2010年代後半から大きな社会問題として注目されました。以下に裁判となった判例を3件記載します。
判例1: リースバック賃料の急上昇を巡る裁判
高齢者夫婦が自宅をリースバック契約で売却し、買い手に賃料を支払う形で住み続けることになりました。しかし、契約から1年後、買い手が賃料を2倍に引き上げることを通告。夫婦は賃料を払えなくなり、最終的には退去を余儀なくされました。リースバック契約時に賃料の上昇が契約書で明記されておらず、不当であるとして裁判に発展しました。
- 判決のポイント
裁判所は、契約書に明記されていない賃料の急激な上昇は不当であると判断し、夫婦側の主張を認め買い手側に賠償金支払いを命じました。
判例2: 売却価格の不正を巡る裁判
リースバック業者が売主に対し「市場価格の約8割で買い取る」と説明しましたが、実際の売却価格は市場価格の5割程度であり、売主は大きな損害を被りました。この売主は業者の説明が虚偽であり、悪徳商法にあたるとして裁判を起こしました。
- 判決のポイント
裁判所は、業者の説明が不正確であり、売主に対して十分な説明責任を果たしていなかったことを認め、売主側に有利な判決を下しました。業者が「適正な市場価格」を適切に提示しなかった点が批判され、売主の損害を賠償するよう命じられました。
判例3: 契約解除を巡る争い
売主がリースバック契約を締結しましたが、後から条件に不満を抱き、契約解除を申し入れました。しかし、業者は契約解除に応じず、売主は仕方なく裁判に訴えました。売主がリースバック契約の内容を十分に理解していなかったことが問題となり、契約解除が容易ではない状況に直面しました。
- 判決のポイント
裁判所は、契約書に記載されていた内容を重視し、契約解除を認めませんでした。売主側が契約内容を十分に理解していなかったことがトラブルの原因となり、業者側に有利な判決が下されました。
■高額賃料で生活が逼迫するケース
高齢者夫婦は、現金が必要で自宅をリースバックで売却しましたが、契約後に賃料が大幅に引き上げられ、支払いが困難に。彼らは固定収入が少なく、貯金もほとんどなかったため、賃料の支払いに追われて生活費を削らざるを得ない状況に陥っています。賃料の負担が増すことで、日常生活で必要な医療費や食費が捻出できず、健康に悪影響を及ぼしています。
■ 自宅を失い、転居を余儀なくされたケース
当初の契約条件が変更され、結局住み続けられなくなり、自宅を退去する羽目になりました。高齢のため賃貸戸建て物件を見つけるのは難しく、公営住宅に転居したのです。老後の生活資金を確保しようとした結果、かえって不自由な住環境に追いやられてしまいました。
安易に知識のないまま契約をすると、大切な家族や親戚縁者にも迷惑をかける事になります。分からない事は曖昧にするのではなく、分かるまで聞きましょう。
リースバック契約を正しく結ぶ
本来は画期的で魅力的なリースバックという契約を、売り手側も買手側も有益に活用していく為、不動産業者は、仕組みを整えていくことが大切だと思います。
- 契約内容の透明化
リースバック契約の条件を分かりやすく説明し、家賃や再購入価格の設定基準を明確にする。
≪契約書の統一フォーマット≫
業者によって契約書の記載内容や形式が異なる場合、内容が分かりにくい。業界全体で標準化されたフォーマットを導入するなど、契約内容を明確にする。
≪重要事項の強調表示≫
賃貸料の金額、契約期間、再購入価格、更新条件などの重要事項を契約書の冒頭や目立つ部分に明記し、契約者が確認しやすいようにする。
≪透明な計算式の提示≫
家賃の設定や再購入価格がどのように算出されるかを契約者に説明し、根拠となる計算式や評価基準を文書で提示する。賃料が市場相場に基づいているか、再購入価格が、売却時の価格や市場動向に基づいてどのように設定されるのかなど情報を明示する。
≪契約期間の詳細説明≫
契約期間を明確にし、更新が可能な場合にはその条件や方法を文書で具体的に説明する。
≪契約終了時の対応を明記≫
契約終了時に退去が求められる場合や、再購入権が行使できる場合の条件を具体的に記載する。
≪再購入権行使の期間と条件≫
再購入権を行使できる期間、購入価格、手続きの詳細を具体的に契約書に記載する。
例:「再購入は契約締結後○年以内に可能」
「再購入価格は契約時の売却価格に○%の手数料を上乗せした金額」
費用の明示 手数料、税金、その他のコストについても具体的に説明し、事前に契約者が予測可能な状態を作る。 - リスクとメリットの説明
≪リスクの明示≫
契約者が将来的に直面し得るリスク(家賃負担増、再購入不能の可能性、退去リスクなど)とメリットを、項目ごとに一覧形式で分かりやすく提示し、説明する。 - 説明責任を果たすための取り組み
≪重要事項説明書の義務化≫
重要事項説明書を作成し、契約前に説明する。
≪契約者への冷却期間の提供≫
契約後一定期間(1週間程度)を設け、その間に契約を無条件で解除できる制度を導入する。 売主は、第三者に、提示された条件を伝え、意見を聞くことや、不動産鑑定士などに自宅を鑑定してもらうなどして、客観的な知識を取り入れ、納得の上でリースバックを検討してから、契約する。
まとめ
契約内容の透明化を進めることで、契約者が十分に理解した上でリースバック契約を結ぶ環境が整います。これにより、後のトラブルを防ぎ、リースバック契約が本来の目的である「生活の安定」に寄与し、画期的なリースバック契約の更新ができます。
コメント