今、不動産市場で何が起きているのか
「マンションを買いたいけど、どこも高すぎて手が出ない」
「売りに出しているのに、なかなか買い手がつかない」
「不動産価格はいつ下がるの?ずっと待っているんだけど…」
こういった声が、2026年5月の今、これまで以上に増えています。
実は今、不動産市場では「ワニの口」と呼ばれる危険なシグナルが出ています。
売り手と買い手の価格認識が大きくズレ始め、市場に歪みが生まれているのです。
宅建士として、そして京都・滋賀エリアで実際に物件を持つ投資家として、この状況を正直にお伝えします。
「ワニの口」とは何か
不動産業界に「ワニの口」という言葉があります。
「売出価格(売り手が希望する価格)」と「成約価格(実際に売れた価格)」の差が開いた状態を指します。グラフにすると、ちょうどワニが口を開けたような形に見えることからこう呼ばれています。
通常、売出価格と成約価格の差は10%前後です。売り手が多少強気な価格をつけても、交渉で1割程度下がって成約するのが一般的でした。
ところが2026年2月のデータでは、中古マンションの売出価格と成約価格の乖離が3割近くまで拡大しています。
売出価格110.97万円/㎡ に対して、成約価格86.99万円/㎡という数字が出ています。
つまり、売り手は「この価格で売れる」と思っているが、買い手は「その価格では買えない・買わない」と言っている状態です。
これは市場に何が起きているかを如実に示しています。

なぜ「ワニの口」が開いたのか
──3つの原因
原因①
▶︎ 売り手の「強気」がまだ続いている
2020年から続いた不動産価格の上昇局面で、「不動産を持っていれば値上がりする」という意識が売り手に定着しました。
特に都心部の中古マンションオーナーは、「自分の物件は高く売れるはず」という期待を持ち続けています。
実際、2026年4月の東京都中古マンション市場では、城西エリアで売出価格が1カ月で大幅に上昇し、売り手の強気が鮮明になっています。
しかし問題は、その強気な売出価格に見合う買い手がいないことです。
原因②
▶︎ 買い手の購買力が落ちている
売り手が強気なのに対し、買い手側の状況は厳しくなっています。
金利上昇と住宅ローン審査の厳格化により、住宅ローンの借入可能額が約15〜20%減少するという試算が出ていて、購入希望者の4人に1人が融資を受けられなくなってます。
「本当は5,000万円の物件を買いたいのに、ローンが4,000万円しか通らない」という状況が増えているのです。
こうして、売り手の希望価格と買い手が出せる価格の差が広がっています。
原因③
▶︎ 在庫が増え始めている
直近1カ月のデータでも、価格は高値圏を維持している一方、中古マンションの在庫件数は8カ月ぶりに増加しています。
売れ残りが増えているということは、「売り手の強気価格では買い手がつかない」という現実が数字にも表れ始めたということです。
在庫が増えると売り手同士の競争が激しくなり、最終的には価格が下押しされます。今はまだその入口の段階です。
関西(京都・滋賀・大阪)
▶︎ 状況は東京と違う
「でも自分が住んでいるのは関西。東京の話は関係ない?」と思っていませんか?
半分そうで、半分違います。
東京市場のトレンドは、数カ月〜1年程度の遅れで関西市場にも波及することが多いです。
特に大阪市内の中古マンション市場は、東京の動きと相関性が高いです。
大阪市場:万博後は「終わりではなく始まり」
大阪市場について詳しく解説します。
「万博が終わったから大阪の不動産は下がる」と考えている方が多いですが、現実はそれほど単純ではありません。
万博後の大阪不動産、価格はどうなっているか
大阪市全体の住宅地地価は2025年に前年比+5.8%と高い上昇を記録し、商業地も+11.6%と顕著な上昇を示しています。万博終了後も、この上昇基調は続いています。
2024年の大阪市内の平均分譲マンション価格は1戸あたり約5,000万円超に達し、一部の都心タワーマンションでは1㎡あたり150万円超という高値も見られます。
なぜ「万博後に暴落」は起きないのか
建築費が下がりにくいため新築マンションの価格が下がらず、その結果として中古マンションも下がらない。「万博が終わったから安くなる」という単純な話ではないのです。
夢洲・IR開発が次の材料になる
万博跡地の夢洲エリアが今後の大阪市場を左右する最大のポイントです。夢洲においてIR(統合型リゾート)開発が進行中で、2030年秋の開業を目指しています。この計画は大規模な国際会議場・ホテル・交通基盤整備を含む複合開発で、周辺地域の地価や市場心理に好影響を与えると予測されます。
万博跡地(約50ヘクタール)は「夢洲第2期区域」として再開発が計画されて、夢洲への投資は万博後も10年以上継続する計画です。「万博が終わったら終わり」ではなく、これからが始まりとも言えます。
エリア別の温度差に注意
特に中央区と西区は中古市場の動きが非常に活発で、築20年以上のマンションでも価格維持力が高い状況です。一方で、金利上昇に伴い、駅近や管理状態の良好な物件では、相対的に価格維持が期待できますが、郊外や古い物件では、価格を下げないと売りにくいでしょう。
大阪は「エリアによって明暗が分かれる」市場になっています。
大阪市場で今、注意すべきこと
東京の不動産市場は、実際に住むために購入する「実需」が中心です。
一方、大阪は「住むために買う人」と「値上がりや家賃収入を目的に買う投資家」の両方が市場を支えています。
そのため、大阪の不動産価格は投資マネーによって押し上げられている面があります。
ただ、これは逆に言えば、投資家が一斉に売ったり、市場から撤退した場合、価格が下がりやすいというリスクもあるということです。
特に、今後さらに金利が上がれば、融資を利用して不動産を購入している投資家は、利益が出しにくくなります。
その結果、投資をやめる人が増える可能性が高いでしょう。
大阪市内の高額物件に投資する場合は、
「いつ売るのか」
「いくらで売る想定なのか」
という“出口戦略”まで考えた上で、慎重に判断することが大切です。
京都市場:地価上昇全国4位の実力
▶︎ 「高値疲れ」も始まっている
数字で現状を把握
京都府の2026年の公示地価は+2.3%となり、住宅地の地価は47都道府県中4位という高い水準です。また京都市の2026年公示地価の平均は59万1,749円/㎡(変動率+5.97%)で、駅別では京都河原町駅周辺が最高値を示しています。
つまり、京都の地価は今も上がり続けているのです。
なぜ京都の不動産は、なかなか下がらないのか
京都市内の不動産が下がりにくい理由は、主に3つあります。
ひとつは、インバウンド需要です。訪日外国人が急回復しているので、京都の宿泊施設・民泊需要は非常に高く、観光地に近い物件への投資も好調です。
次に大学・移住需要です。京都大学・同志社・立命館など30校以上の大学があり、毎年一定数の学生・教職員が流入します。また、「京都に住みたい」という移住希望者も多く、年間を通じて移住者数は安定しています。
そして、物件の希少性です。京都市中京区は、交通や買い物の利便性が高く、京都中心部という希少性もあるため、土地の人気が非常に高いエリアです。マンション用地としても、ホテル用地としても旺盛な需要が、しばらくは続くでしょう。
特に、市内中心部は新しく開発できる土地が限られているため、「欲しい人は多いのに、売りに出る土地が少ない」という状態になっています。
だから、中京区の地価は今後も緩やかに上昇していくと予想されています。
「一方、高値疲れ」のサインも出始めている?!
京都の不動産価格は2015年から2025年にかけて上昇し、今後も高くなる可能性はあるけれど、大幅な上昇は期待しにくく、今の高値で売却することで、将来的な価格変動リスクを回避できるという見方も出てきています。
つまり、「上がり続けてきたが、さすがに天井が近いのでは?」という空気が市場に出始めているのです。
特に強気な売出価格を設定した物件は、以前より成約までの時間がかかるようになっています。「京都ブランド」に乗っかりすぎた高値物件には、買い手がつきにくくなっているのです。
京都市場で注意すべきエリアの差
京都市内でも、エリアによって全く異なる動きをしています。
- 中京区・下京区(四条・烏丸周辺):需要が最も強く、価格維持力が高い
- 左京区(出町柳・銀閣寺周辺):学生・研究者需要で安定している
- 右京区・伏見区の郊外部:利便性が低い場所では売れ残りが増えつつある
- 山科区・西京区:価格が相対的に手頃で、実需層の需要が底堅い
「京都」というだけで安易に価格を信じるのは危険です。同じ京都市内でも、エリアによって価格の動きが違うので比較検討が必要です。
京都市内で売却を考えている方へ
京都で不動産を売却するなら、相場が高騰している今が最適なタイミングという見方があります。市場が過熱している場合、供給が増えると需給バランスが崩れ、価格が下落する可能性もあります。
「もう少し待てばもっと上がるかも」と思っているうちに、市場が変わってしまいます。売却を検討しているなら、今の相場を把握した上で早めに決断することをおすすめします。
滋賀・郊外エリアの格安物件
私が実際に物件を持っている滋賀・郊外エリアでは、中古マンション市場とは別の動きがあります。
200万円以下の格安物件・空き家については、ローン審査の影響を受けにくい現金購入層が主な買い手です。そのため、今回の「ワニの口」問題の影響は限定的です。
むしろ、「高い物件を買えなくなった層」が格安物件に流れてくる可能性があり、今後需要が高まる可能性さえあります。
今の市場でどう動くべきか
「買う人」「売る人」「待つ人」はどう動くのが最適か
知ってるのと知らないのとでは大きな差が出る。
買う人へ:「強気価格」の物件は、値引き交渉へ
ワニの口が開いているということは、売り手も「成約しないと困る」という状況に近づいているということです。
強気な価格で出ている物件でも、3カ月以上売れ残っている物件は、値引き交渉に進んでください。
「この物件はいつから売り出しているか」「価格変更履歴はあるか」を確認した上で交渉に臨むことが大切です。不動産会社のデータベース(REINS)では価格変更履歴を確認できます。担当の不動産会社に「価格変更履歴を見せてほしい」と伝えてみましょう。
また、「成約価格で判断する」ことも重要です。周辺の成約価格(実際に売れた価格)と売出価格を比較することで、その物件が「割高かどうか」を判断できます。
売る人へ:「強気価格」は今すぐ見直す
「ワニの口」が開いているということは、強気な売出価格では売れにくい市場になっているということです。
3カ月経っても問い合わせが少ない・内見が来ても申し込みにつながらない場合は、価格設定の見直しが必要なサインです。
売却を急ぐ理由がある場合(相続・住み替え・空き家の維持費負担など)は、早めに価格を現実的な水準に修正した方が、早く売れる可能性があります。
出口戦略を考えて売ることが大切です。「いくらで売りたいか」ではなく「いくらなら売れるか」を把握するために、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
待つ人へ:「いつか下がる」はリスク
「もっと価格が下がってから買おう」と思っている方も多いと思います。
ただ、「価格が下がるまで待つ」は、リスクでもあります。
価格が下がらないまま数年が経過すれば、その間に払い続けた家賃は戻ってきません。また、自分の収入・信用力・健康状態が変わって、ローンが通りにくくなる場合もあります。
「待つ」を選ぶ場合は、「何年待つか」「何をトリガーに動き出すか」を決めておくことが大切です。漠然と待ち続けるのではなく、「価格が〇%下がったら動く」「金利が〇%になったら動く」という基準を持ちましょう。
「今の市場」を評価する
今の不動産市場を一言で言うと「高すぎて手が届かない人が増えている市場」です。
中古マンションの価格は上がり続けているのに、金利も上がってローンが通りにくくなっている。売り手は「高く売りたい」、買い手は「高くて買えない」。この両者のズレが「ワニの口」として現れています。
では、これは「不動産投資をやめるべきサイン」なのでしょうか?
私の答えは「NO」です。ただし、やり方を選ぶ必要があります。
私自身は今、京都・滋賀の格安物件・空き家再生に絞った投資を続けています。その理由は
理由①:格安物件はローンがいらないので、金利上昇の影響ゼロ
200万円以下の物件なら現金で買えます。ローンを使わないということは、金利が上がっても・審査が厳しくなっても、まったく関係がありません。「ワニの口」問題も、金利上昇問題も、関係ない世界で投資ができるのです。
理由②:「高くて買えない人」が増えるほど、格安物件の需要が上がる
「中古マンションが高すぎて買えない」「ローンが通らなかった」という人が増えると、その人たちは「もっと安い物件はないか」と探し始めます。格安物件・地方物件・空き家再生物件への関心が高まるのは、必然的な流れです。
つまり、高額物件が売れなくなるほど、格安物件は売れる可能性が生まれるという逆転の発想です。
ただし、注意点をお伝えします。
中古物件を探した人の約37%が「おとり広告」に遭遇します。大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延し市場が動いている時期は、トラブルも増えやすいのです。「良さそうな物件を見つけた」という時こそ、注意して、第三者の目で確認することが大切です。
具体的アクション
今日からできること
✅ 気になる物件の「売り出し期間」を確認する
SUUMOやHOME’Sで気になる物件を見つけたら、「掲載開始日」を確認しましょう。3カ月以上売れ残っている物件は、値引き交渉をします。
✅ 周辺の「成約価格」を調べる
売出価格だけでなく、実際に成約した価格を調べましょう。国土交通省の「不動産取引価格情報検索」サービス(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)で、近隣の成約事例を無料で確認できます。
✅ 売却を考えているなら「複数社査定」を今すぐ依頼する
1社だけの査定では、相場を正確に把握できません。最低3社に査定を依頼し、査定価格の根拠を比較してから判断しましょう。
✅ 「おとり広告」に注意する
ネット上で「この価格でこの条件は安すぎる」と感じた物件は要注意です。問い合わせたら「すでに成約済み」と言われる「おとり広告」の可能性があります。現地確認・書面確認を必ず行ってください。
✅ 格安物件・空き家再生に興味があるなら、まず相場感をつかむ
各自治体の空き家バンク・LIFULL HOME’S空き家バンクで、滋賀・京都エリアの物件を検索してみましょう。「中古マンションは高すぎる」と感じている方ほど、格安物件の選択肢が広がっています。
まとめ
「ワニの口」は市場の転換点のサイン。冷静に動くことが大切
2026年5月現在、中古マンション市場では売り手と買い手の価格認識に3割近い乖離が生まれています。
これは、これまで続いてきた不動産価格の上昇局面が、転換点を迎えている可能性を示すサインです。
「今すぐ買え」でも「今すぐ売れ」でもなく、大切なのは「自分の状況を正確に把握して、感情ではなく数字で判断すること」です。
「市場の空気に流されず、自分の基準で動く」ことです。
ワニの口が開いている今だからこそ、冷静に情報を集め、信頼できる専門家に相談しながら動くことをお勧めします。
「今の市場で自分はどう動くべきか、具体的に相談したい」という方へ。
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この記事を書いた人:キャサリン 宅地建物取引士(登録番号:第009673号)/賃貸住宅管理業務管理者 京都・滋賀エリアで大家業・空き家投資を実践中。市場の動向を宅建士の目線で分析しながら、正直な情報を発信しています。

